40代、人によっては30代になると、「最近、寝つきが悪いな……」「睡眠時間が短くなった」と感じ始める方が多いと思います。
歳をとっていくと、睡眠時間が変化するというのは、みなさんも聞いたことがあるはずです。
ですが『なぜ変化していくのか』という具体的な理由までを知っている方となると、非常に稀と言えるでしょう。
この記事では『なぜ歳を重ねると睡眠に変化が出るのか』『いったいどういう変化が起きるのか』といった具体的な部分を解説していきたいと思います。
さらに、寝つきが悪い・眠りが浅い、という悩みを解決するための方法『入眠儀式』というものも解説していきます。
器具や薬に頼らなくても自然に眠れる、誰にでも簡単に出来るシンプルな方法なので、ぜひ皆さんに活用して頂きたいと思います。
ページコンテンツ
睡眠変化は男性・女性で異なる!そのボーダーラインは?
同じ人間なのですが、男性と女性では睡眠変化のボーダーラインが大きく違ってきます。
そのボーダーラインですが、男性は55歳、女性は40歳を界として睡眠が大きく変化します。ですが、全ての人がこの年齢で一気に変化するのではなく、当然のことながら個人差というものが存在します。
例えば、55歳の男性であっても、20代の頃から変わることなくよく眠れているという人もいます。
ただし、こういった方の場合は、睡眠に対して大なり小なり努力している傾向にあるのは確かです。
下記のグラフのように、53.8%の方が何らかの睡眠対策をしているようです。
ただ女性の場合、男性とは違って、妊娠・出産という女性特有の身体的機能があるため、10代~20代のうちに良質な睡眠が取れるよう、母体形成のプログラムが組まれていることが分かっています。
そのために、妊娠適齢期(一般的に20歳~34歳)を過ぎた頃から睡眠の質が変わってしまうことがあります。具体的には『寝付きが悪くなる・眠りが浅い・夜中に何度か目が覚める』という変化が顕著に現れ出します。
若い頃(特に10代)のような睡眠は年齢を重ねても可能か?
若い頃、特に10代の頃というのは、ほとんど誰もが何も考えることなく、ぐっすりと眠れたはずです。
眠りも深く、少々睡眠時間の短い日が続いたとしても、わりと平気でいられたと思います。
しかし、年齢を重ねるごとに寝つきが悪くなり、朝、目が覚めても「なんだか眠った気がしない……」といった状態になる方が多いのですが、実はこれはごく自然なことであり、ほとんどの方に起きる現象なのです。
ぐっすり眠れたという記憶を思い起こすと、多くの方はおそらく10代、もしくは20代前半くらいの頃を思い浮かべると思います。
人間という生き物は、自分の経験や記憶を基にして判断するので、最も疲れ知らずだった10代の睡眠を記憶の奥底から引き出してくるのだろうと推測できます。
前述した通り、年齢によって睡眠は変化していきます。
年齢によって変化していく睡眠時間 | |
新生児(0ヶ月~2カ月) | 約14時間~17時間 |
乳児(3ヶ月~11カ月) | 約10時間~13時間+昼寝を数回 |
幼児(1歳~3歳) | 約11時間~14時間 |
4歳~6歳 | 約10時間~13時間 |
7歳~12歳 | 約9時間~11時間 |
13歳~18歳 | 約8時間~10時間 |
18歳~25歳 | 約7時間~9時間 |
26歳~64歳 | 約7時間~9時間 |
65歳以上 | 約7時間~8時間 |
上記の表は、人間の年齢ごとに変化していく睡眠時間をまとめたものです(平均的な時間をまとめており、睡眠時間には個人差があります)。
ですが、あくまでも平均睡眠時間を対象にまとめたものであり、睡眠というのは時間も大事ですが、質も並行させる必要があります。
年齢を重ねると睡眠の時間や質が変化していく理由とは
人間の睡眠が年齢と共に変化する理由として2つ考えることができます。
まずは、そのあたりから解説していきたいと思います。
年齢によって変化する基礎代謝
生物というのは全て、生きていくためのエネルギーを作り出す必要があります。
この生きていくエネルギーを作り出す化学変化を代謝といいます。
この代謝というのは、身体を動かしたりすることがなくても、生きていくだけ(心拍や呼吸など)で使うエネルギーを生み出すものであり、これを『基礎代謝』といいます。
基礎代謝は、人間が1日で消費するエネルギーの約70%もあります。特に睡眠中には、昼間に溜め込んだ物質の分解や、身体の修復作業に大量のエネルギーを使っています。つまり、眠るということは、相当の体力を消費しているということです。
低下した体力とともに、基礎代謝も低下することによって、睡眠時間が短くなり、眠りも浅くなってしまうということです。
睡眠中による脳の活動の変化
睡眠には、脳内の記憶を整理するという役割があります。
記憶の整理とは、起きている間に脳内に蓄えられた様々な情報を、脳内でリプレイすることで必要な神経と繋ぎ、不必要な神経を消去してしまいます。この作業によって、余分な情報が削除され脳内の空き容量が増えて新しい細胞が生まれやすくなります。
簡単に言ってしまえば、睡眠中に脳内のメモリを増やしている、ということになります。
誰でもそうなのですが、若いときほど初め知ることや経験することが多く、膨大な量の情報が蓄積されていきます。
つまり、大量の情報が入ってくるために、睡眠中の記憶の整理に時間がかかってしまい、その分、大量のエネルギーを消費することになります。
しかし、年齢を重ねて経験を積むことによって、初めての経験をすることがあっても、過去に経験したことの記憶と組み合わせることで対応が可能となってしまうのです。
ということは、脳にとってはそれほど大した情報ではなくなるので、記憶の整理にかける時間は短時間で済むことになります。
脳内で情報を整理する量が減ることで、それに比例して睡眠時間も減っていくということになります。
適度な睡眠がとれなくなると様々な障害を発症する
睡眠に何らかの問題を抱えている人というのは、40歳を超えたあたりからうつ病の発症率が高くなると言われています。
睡眠障害による鬱病(うつびょう)の発症率
自分が歳をとったと感じる時は、思うように動けなくなった・食べる量が減った、など様々だと思いますが『若いときのように眠れなくなった』ということも挙げられると思います。
睡眠は、私たちの健康や日常生活に非常に大きな影響を与えます。
『若い時のように眠れなくなった』と考えるよりも、今の自分の年齢にふさわしい睡眠があると考えるようにすることも大切です。
つまり、10代の頃のような睡眠を取り戻そうと無理をするあまり、かえって睡眠の質を下げてしまうことにもなります。
今の自分に合っている睡眠を見つけることで、それを少しずつでも自分のものにすることが一番の方法だと言えるでしょう。
寝つきが悪くなったと感じる方は『入眠儀式』の取り入れを
この記事を読んでいる方も、スポーツが好きな方はかなりいらっしゃるかと思います。
開会式などで、国旗の掲揚とともに国歌が流れます。『君が代』が流れ日章旗が掲揚されると、やはり日本人として気が引き締まる想いになります。
こういうのを「余計な儀式」と考える人もいるかと思いますが、実は余計だと思いながらも、その深層心理ではかなり大きな影響を受けているのをご存じでしょうか?。
この深層心理の影響というのは、睡眠でも応用することができます。
つまり、眠りにつくという行為に儀式を与えることによって、自然に眠りにつくよう心理的に誘うということです。簡単に言えば『条件付け』のような感じですね。
質の良い睡眠を得るために、それにふさわしい儀式を行う。
これが『入眠儀式』です。
入眠儀式などという大層な言葉を使うと、まるで新興宗教やカルト教団のように思えてしまうかもしれませんが、れっきとした睡眠医学で用いられる用語なんです。
何か『特別なお祓いをする・特別な薬を飲む』というようなことではなく、みなさんが日常で行っている「歯磨きをする」「トイレに行く」「寝巻きに着替える」といった何の変哲もない行為です。
このような何気ない行為のことを睡眠医学では『入眠儀式』と呼んでいるんです。
睡眠に何らかの変化を感じたら入眠儀式を活用しましょう
入眠儀式というものには、脳を睡眠へと導く効果があります。
毎晩、眠る前に同じ行動をとることによって、脳の大脳辺縁系の一部である帯状回前部というところが刺激を受けます。
この刺激によって、脳はその行動と睡眠をイコールと捉え、眠りにつきやすい状態にもっていきます。
同窓会などで昔の級友に会うと、その頃の記憶が鮮やかによみがえり、楽しい気分や切ない気分になる人も多いはずです。これも『級友に会う』という刺激によって、脳内で当時の心情を思い出させるという働きに繋がります(この場合の級友に会うというのが儀式にあたります)。
このように、あらゆる『儀式』というものは脳に対して刺激となり、その結果、後の行動に大きく影響を及ぼします。
入眠儀式というのは、まさにこういった脳の特徴を利用したものなのです。
入眠儀式で行っている具体的な行動とは
眠る前というのは、特殊な例を除いて、プライベート色が濃いと思います。
眠る環境も、眠る前にしていることも、人それぞれです。つまり他人に知られることはほとんどありません。
そして、眠る前に行う習慣を振り返ろうとしても、何年も続けていることが多く当たり前すぎるので、客観視することは非常に難しいと思えます。
まずは、眠る前に何らかの行為を行っているか、その割合を見てみましょう。
『睡眠スイッチ』といえる行動がありますか?
では次に、眠る前にとっている行動についての実例を以下に挙げてみましょう。
視覚 | テレビを観る・DVDを観る・ゲームをする・ネットをする |
聴覚 | 瞑想用CDを聴く・スマホやCDで音楽を聴く・学習CDを聴く |
体性感覚 | ストレッチをする・ヨガをする・ツボを押す・足湯をする |
言語 | 小説を読む・漫画を読む・雑誌を読む・SNSに書き込む |
思考 | ヒツジを数える・イメージトレーニングをする・翌日の用意をする |
飲食 | 暖かいものを飲む・タバコを吸う・酒を呑む・水を飲む |
呼吸 | 深呼吸をする・隣の人と呼吸を合わせる・玉ねぎを足元に置く |
あなたの『睡眠スイッチ』といえる行動は何ですか?
いかがでしょうか?
睡眠前に何かしらの行為を行っている人は意外にも多いことがわかります。
さらにその行為というのは多岐に渡っているので、中には「オイ!そんなことしたら余計に眠れないわ!」とツッコミを入れた方もいるかと思います。
しかし、ツッコミを入れたくなるような行為であったとしても、大切なことは、眠れたという結果なんです。こういった行為を行うことによって、スムーズに眠りに入ることができることが重要なのです。
眠る前に決まった行為をしている結果、スムーズに眠りに入り、朝の目覚めもスッキリしているのであれば、その人は入眠儀式をパーフェクトに活用できているということになります。
絶対にしてはいけないことは、昨日今日見聞きしたような、浅はかな睡眠の知識に頼ってしまい、逆に睡眠の質を落としてしまうことです。
質の良い睡眠をとるためのチェックポイント6つ
- 朝、同じ時間に朝日を浴びましょう
朝、目覚めて陽を浴びると、人間の身体に備わっている体内時計に信号を送ります。
動け!と指令がいき心身が活動状態となります。 - 平日と休日の起床時間差を少なくしましょう
就寝の時間差はメラトニンの分泌される時間をずれさせます。
そのため、睡眠環境は悪い方行に向かってしまいます。 - 電子機器の光は睡眠1時間前に切りましょう
PCやテレビなどの強い光を浴び続けると、メラトニン分泌時間が抑えられ、眠気を妨げてしまいます。 - 優しい光を点けましょう
眠る際は、真っ暗にせず蛍光灯の豆電球などの、少し暗いと思える照度が最適です。 - 入眠儀式を上手に活用しましょう
自分がリラックスできるような、眠る前の行為を見つけましょう。 - 少し大きめのゆとりあるパジャマを着ましょう
締めつけがきついと、スムーズな眠りに入れません。
リラックスできるパジャマやスウェットなどがお勧めです。
人間は本来、朝の光が脳に届けば約16時間後には自然に眠くなる生き物なのです。
文明の発達によって、太陽が沈んでも夜は明るいままで、社会の環境も非常に複雑になっていて、人間が本来持っている生理的な睡眠サイクルを崩している方が増えています。
眠る前の脳というのは、かなり認知機能が低下しています。そのため冷静な判断ができなくなってしまいます。
そこに不安という要素が加わると、何とかして眠ろうと焦ってしまい、逆に目が冴えてしまうということになるので、気をつけて頂きたいと思います。
イベントの前夜こそ普段と同じ行動をとること
眠りに入る前の行為(入眠儀式)は、できる限り変えないことが大切です。
翌日に『大切な商談』や『交際相手のご両親に会う』など、絶対に眠らなくてはいけない夜に限って、普段行っている入眠儀式とは違う行為をしてしまった結果、眠れなくなったというのは、誰しもありがちなことです。
入眠儀式を行うことによって、普段はしっかりと眠ることができるのですから、イベント前夜こそ普段通りの行動をとるよう心がけるようにして下さい。
普段の入眠儀式のイメージを頭に焼き付けておく
よく、旅行や出張であまり眠れなかったという経験がある方も少なくないと思います。
そんなときによく出る理由で「枕が変わると眠れない」といった言葉を聞きます。
ですが、これは間違った思い込みで、普段であれば無意識に行っている入眠儀式を、旅先では行っていなかったということが可能性として高いと思われます。
しかし厳密に言ってしまえば、ホテルなどで普段通りの入眠儀式を行えるのかと言うと、少しばかり難しい面があるのかもしれません。
こういうときのために、普段から行っている入眠儀式のイメージを固めておくことが望ましいのです。
つまり、普段とは違った部屋や雰囲気の旅先であっても、頭の中にいつもの状況をイメージとして焼き付かせていれば、普段と同じ入眠儀式として脳が認識します。これによって、日常と変わらない質の良い睡眠を確保することが可能となるのです。
イメージトレーニングはかなり効果大きいので、ぜひ普段から取り入れるようにして下さい。
まとめ(質の良い睡眠)
質の良い睡眠をとるために、入眠儀式は非常に有効なテクニックの一つだと言えます。
入眠儀式で取り入れる行為を、具体的に決めておいて毎晩確実に実践することが大切です。そして出来る限り、入眠儀式で取り入れる行為は、副交感神経を刺激するようなリラックスできる行為を選んで下さい。
例えば、歯磨きを取り入れている場合は、単に歯磨きをするのではなく『鼻歌を歌いながら・音楽を聴きながら』のほうが、より効果が増します。
また、眠る前に聴く音楽を決めておいて、就寝する10分~15分前に流すことも非常に効果があります。
睡眠は、皆さんが思っている以上に、健康や普段の生活に影響を及ぼしていることを忘れないで下さい。
質の良い睡眠をとれるよう、普段から心がけるようにして頂きたいと思います。
関連する記事はこちら
SPONSORED LINK
コメント
Comments are closed.