現在、先進各国の研究者たちが競い合うようにして《老化》について研究を進めていますが、人間をはじめ命あるもの全てにとって『老化は避けることの出来ない宿命』だと言えるでしょう。その『老いの原因』の一つとして、オステオポンチンという物質が大きく関係しているようです。
つまり、老化の原因となっているオステオポンチンを体内から減らすことで、人類永遠のテーマでもある《老いの抑制》に期待が持てるんです。
しかし『老化の原因物質』と言ってしまうと、オステオポンチンは害悪なだけの物質に思えてしまうでしょう――ですが決してそうではないんです。この物質は、骨を作るために必須の物質であり、さらに免疫を活性化させる働きも持っているんです。
そんな重要な物質が、なぜ老化の原因となっているのか――。
この記事では『オステオポンチンにはどんな働きがあるのか』『オステオポンチンを減らすために摂取すべきもの』など、謎の多いこの物質について詳細に話していきたいと思います。
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全ての病気の元とも言える老化
古来より人間は、老いない身体、いわゆる《不老》という夢を追い求めて研究を続けています。
現代医学では、心筋梗塞や脳卒中、ガンなどの病気に対して、その個々の疾患に対応した治療を施すことしか出来ません。ですが、様々な病気の大元でもある《体のネガティブな変化=『老化』》の速度を緩やかにすることが出来れば、多くの病気を治癒することにも繋がります。
つまり、複数の病気に対しても、老化を抑えることで一挙に対処することが可能となり得るんです。
体の老化が進みにくい人ほどオステオポンチンが少ない
2016年4月に発表された疫学研究の論文が、医学系専門誌《クリニカル・ケミストリー・アンド・ラボラトリー・メディスン》に掲載されました。
この研究の内容は、大きな病気を抱えていない『100歳を超えた健康長寿グループ』と『一般の70代のグループ』に分けて、血中のオステオポンチンの量を比較したものです。結果として、一般の70代のグループに比べて、健康長寿グループの体内では、オステオポンチンが圧倒的に少ないことが明らかになっています。
つまり、何歳になっても元気で活き活きしている人や、老化が進みにくく見た目が若い人というのは、体内のオステオポンチンが少ないということです。
逆に言えば、オステオポンチンという物質は、生物の老化を進めてしまう原因の一つだと言えることになります。
オステオポンチンという物質の正体とは
冒頭でも述べていますが、そもそもオステオポンチンという物質は、人間の骨を作るために必須の物質なんです。
この物質は1980年代に発見されたもので、オステオポンチンのオスは『骨』を意味し、ポンスが『橋』の意味を持っていて、これが名前の由来となっています。つまり、カルシウムとコラーゲンを結合させて骨を形成するという、非常に重要な役割を担っている物質です。
さらにオステオポンチンは、免疫を活性化させる役割も果たしています。
◆ オステオポンチン役割の一例
赤ん坊の頃から、人間の体の様々な臓器や部位で、必要に応じてつくられるのですが、たとえば、怪我で傷が出来た際に、傷口付近でオステオポンチンがつくられて、免疫を活性化させることによって傷口を治療させる働きがあります。
このように、オステオポンチンは生命維持にどうしても欠かせない物質ということなんです。
しかし一方で、腎臓の周りにオステオポンチンが増えすぎた場合には、尿路結石になりやすい性質も持っているので、まさに『諸刃の剣』的な物質でもあります。
オステオポンチンが老化を進めるメカニズム
前述したように、この物質は傷口を治したりするために、免疫を活性化させるという役割を担っています。通常では傷が治った際に消えてしまうので、傷による炎症も鎮まります。
ただ、免疫が活性し続けると、逆に弊害になってしまうんです。
どういうことかと言うと、Tリンパ球(上記画像)が異常化してしまうことで、本来であればオステオポンチンが存在していると困る状況下でも、大量にオステオポンチンを分泌し続けてしまい、免疫が活性し続けることになります。
こうなってしまうと、免疫のバランスが崩れてしまい、体のあらゆるところで炎症が長期に渡って続くことになります。これが《慢性炎症》と言われる状態なんです。
慢性炎症は、少しずつ体にダメージを与え続け、老化を進めてしまいます。
たとえば、人間の健康や美容に関連が深い血管で慢性炎症が進行してしまうと、動脈硬化が進むことになり、心筋梗塞や脳卒中といった病気に繋がることになります。とくに、血管の年齢が高くなると、人間は間違いなく《老い》を早めることになるんです。
血管年齢と見た目の若さや健康状態というのは、ほぼ完全に比例していると言っても過言ではありません。
認知症にも影響するオステオポンチン
同じ炎症でも2種類あり、風邪や怪我などで起きる炎症は急性炎症で、例えるなら《大火事》のようなものです。反対に慢性炎症は《小火(ぼや)》のようなもので、小さな炎症が長期間続いてしまう現象を言います。
◆ 急性炎症と慢性炎症の違い
急性炎症 | 慢性炎症 | |
原因 | ・侵入した菌やウィルス ・免疫機能が一時的に弱った状態 |
・腸内で増えた毒素など ・長期に渡る弱い炎症 |
症状 | ・急な症状で喉やリンパ節が腫れる ・発熱を起こす |
・自覚症状はほとんど無し ・炎症の長期化で、その臓器は機能しなくなる |
回復 | ・炎症が静まると回復 | ・元の状態には戻らない |
たとえ小さな炎症と言えども、長期間続くことによって、ジワジワと体のあちこちを蝕んでいきます。
前述しているように、炎症が慢性化すると動脈硬化のリスクが高まるのですが、この他にも『糖尿病』や『ガン』の発症にも関係しており、さらに認知症(アルツハイマー病)にも慢性炎症が影響を与えていることが明らかになっています。
体内でオステオポンチンが増えすぎてしまうと、慢性炎症の発症リスクが高まってしまい、様々な大病を患うリスクが高まることになります。
内臓脂肪が体にダメージを与える
オステオポンチンは、基本的には加齢によって増えていく物質です。
しかし、加齢が原因となってオステオポンチンが増えるのであれば、私たちには全く対策の打ちようがないのですが、実は、加齢以外にも増加させてしまう要因があるんです。その要因が『内臓脂肪』だと言われています。
つまり、加齢とは全く別の要因である《肥満》が原因となって、オステオポンチンが増えてしまいます。
たとえ20代や30代の若い人であっても、内臓脂肪が多い人はオステオポンチンの分泌量が増加していることになります。さらに恐ろしいことは『自覚症状が全くない』というところにあるんです。
栄養バランスの悪い食事や、運動不足、睡眠不足など、不規則な生活習慣を続けていると、体内で内臓脂肪が蓄積されてしまい、ゆっくり確実に体全体へダメージを与えることになります。
重要なのは内臓脂肪をコントロールすること
原因が分かれば、いくらでも対処する方法が出てきます。
要するに、日々の生活を見直して、内臓脂肪をしっかりとコントロールするようにすれば、オステオポンチンの分泌量を増やさずに済むということです。分泌量を減らせば、老化を防ぐことにも繋がります。
そのためにも、毎日の適度な運動、そしてしっかりと睡眠を取ること、もう一つが『オステオポンチンを減らすための食事』が重要となります。
具体的に『どういった食べ物がオステオポンチンを減らす効果があるのか』については、以下の表でまとめておくので、日々の食事の参考にして頂ければと思います。
◆ オステオポンチンを減らす食べ物
食材 | 解説 |
サバ・サンマ・イワシ | 青魚にはEPAやDHAが豊富に含まれており、中性脂肪が内蔵に付くのを防ぐ効果があります。 水煮の缶詰を食べるとDHAが多いので効果的です。 |
クルミ・アーモンド | ビタミンB6が豊富に含まれているナッツ類は、脂肪の燃焼を助けてくれる効果があります。 小腹が空いたときに食べると良いのですが、塩分が多いため『無塩』のものを食べるほうがお勧めです。 |
トマト | 京都大学の研究によれば、トマトには《13-oxo-ODA》という物質が含まれていて、血中の中性脂肪の量を抑制することが明らかになっています。 さらにこの物質には、脂肪の燃焼を助ける働きもあります。 |
キャベツ | キャベツの栄養素の約3割は食物繊維です。食物繊維には、脂肪を収着して体外に排出する働きがあります。 前菜として食べると、食欲を抑制してくれるので食べ過ぎを防ぐ効果もあります。 |
椎茸・まいたけ・えのき茸 | キノコ類も食物繊維が豊富に含まれています。 さらにキノコ類には、キノコキトサンという物質が含まれていて、小腸で脂肪を吸収しにくくする効果があります。 とくにエノキはキノコキトサンが豊富なのでお勧めです。 |
大根。ゴボウ・ニンジン | キノコ類と同じく、根菜類にも食物繊維が豊富に含まれています。 さらに根菜類には『腸内環境を整える』『血行を良くして体温を上昇させる』『代謝をアップする』という効果もあります。 |
エゴマ | 青魚と同じくDHAを豊富に含んでいるので、中性脂肪が内蔵に付くのを防いでくれます。 血圧の改善効果もあるエゴマ油は、加熱すると効果が落ちてしまうので、ドレッシングとして使うことがお勧めです。 |
オリーブオイル | オリーブオイルに含まれている《オレイン酸》には、脂肪の燃焼を助ける働きがあります。さらに、動脈硬化を改善するという研究もあります。 熱にも強いので、炒め物に使うことも出来ます。 |
緑茶 | 緑茶に含まれている《カテキン》には、脂肪の燃焼を促進させる機能があります。さらに、脂肪の取り込みを抑える効果もあります。 濃いめで渋く淹れた緑茶が、とくに効果的です。 |
オメガ3脂肪酸で内臓脂肪をコントロールする
上記の表の中でもとくに良いのは、イワシ・サンマ・サバなどの青魚類になります。
青魚類には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)といった物質を多く含んでいます。EPAもDHAも人間の体内で作ることが出来ないので、食事によって摂取する必要があるんです。
これらは、必須脂肪酸である《オメガ3脂肪酸》というもので、脂肪を燃焼しやすくする機能を持っています。
キャベツ・根野菜・キノコ類などで食物繊維を摂る
食物繊維を摂ることで、新陳代謝が活発になります。
さらに食物繊維には、腸内で脂肪を包み込んで体外へ排出する機能も持っています。つまり、体内に余分な脂肪を摂り込まないようにすることが出来るんです。
サラダにして生野菜を食べることも悪くありませんが、大根やニンジン、ゴボウなどの根野菜を加熱して食べるほうが、体が温まって基礎代謝が向上するので、脂肪燃焼としての効果は高くなります。
キノコ類やトマト、キャベツにも食物繊維は豊富に含まれています。トマトにオイルサーディン(イワシのオイル漬け)を乗せて食べると、食物繊維にプラスしてDHAやEPAも組み合わさるので、脂肪燃焼に大きな効果が期待できます。
間食にうってつけのナッツ類
小腹が減った場合には、おやつとしてナッツ類を食べることがお勧めです。
アーモンドやクルミには、ビタミンB群がバランス良く含有されています。脂肪を燃やす際に、様々な栄養素の代謝の促進するため、ビタミンBは必要な栄養素なんです。
1日に50g(片手一握り分ほど)までがベストな量だと言えるでしょう。
脂肪の代謝を活発にするカテキン
内臓脂肪を減らすために、最もお勧めの飲み物が緑茶です。
緑茶に多く含まれているカテキンには、肝臓の脂肪代謝を活発にする働きがあるので、脂肪を燃焼させる効果は非常に大きいのです。殺菌効果や消臭効果として知られているカテキンですが、脂肪の燃焼にも大きな力を発揮してくれます。
緑茶は急須で淹れるよりも、やかんに茶葉と水を入れて火にかけ、水の量が半分くらいになるまで煮出すと、よりカテキンの効果が高くなります。
ニンニク・シジミは血管を強く柔軟にする
内臓脂肪を減らすことも重要ですが、もう一つ大切なことは、血管を強く柔軟にして血流を良くすることです。
前述していますが、血管が老いてしまうと、健康や美容に様々な弊害をもたらします。そこで、血管の老化を抑制するために摂りたい食材が、ニンニクとシジミなどの貝類なんです。
ニンンクやシジミには、血管を柔軟にする働きがあるので、血流が良くなり動脈硬化などを予防することができます。血管が柔軟になれば血管年齢も若くなるので、病気予防と同時に美容効果にも期待が持てるため、見た目年齢も若くすることが可能です。
ただニンニクは臭いが気になる人が多いため、サプリメントなどを活用して摂取することがお勧めです。
まとめ(老化の原因物質オステオポンチン)
この記事では、オステオポンチンの正体や、どんな形で老化に関わっているのかについて話してきました。
しかし今の時点では、まだまだオステオポンチンと老化の因果関係については、研究の余地が大きく謎の部分が多いことも事実です。
ただ、これからさらに研究が進んでいけば、複数の病気へ一挙に対処できることに期待が持てます。そうなれば、健康で若々しい身体を維持しながら、活き活きとした人生を送ることも、決して夢ではないと言えるでしょう。
人類永遠のテーマである《若返り》が実現するかもしれません――。
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