歯を削る治療法――。
虫歯が出来た場合、虫歯に侵食された部分を削る治療法が当たり前のように行われます。とくに患者目線からすると、それが至極当然の治療法であり、虫歯治療の常識として疑いを持つことすらないのが事実です。
さらに、虫歯の状態がひどい場合には、神経を抜いたり、歯そのものを抜いてしまうという治療が行われますが、これも暗黙の了解といった感じになっています。
しかし、もしこれらの治療法が、根本から間違っているとしたら――?
実は、歯を削る治療をした場合『さらに悪化してしまう』という新常識が浮上しているんです。そして新たな説として『虫歯も歯周病も自然に治癒することができる』という、これまでの治療方法を根底から覆す形で、治療の常識が変わろうとしています。
そこでこの記事では、歯の治療法の最先端情報として『抜歯や削る治療のリスク』について、さらに『痛みのない最新の虫歯治療法』など、歯の最新常識について話していこうと思います。
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虫歯は自然治癒で症状が改善する
『虫歯になると歯を削る』というのが、歯の治療として定着しています。
しかし、安易に虫歯を削ってしまうと、治療したつもりが逆に症状を悪化させ、結局は歯を抜かざるを得ない状況に繋がってしまうんです。
『虫歯になったら患部を削る → 削った部分に詰め物をする』こういった治療法がこれまでの常識だったのですが、近年、このような治療が口腔内に悪い影響を与えてしまうという考え方が有力になっています。
つまり、虫歯というのは削る治療ではなく、自然治癒によって症状を改善させることが出来るんです。まさに、これまでの考えが180度反転してしまう『虫歯治療の新常識』だと言えます。
虫歯を削った部分は何度も再発してしまう
人間は歯を失うと、口元は緩み顎(あご)は痩せてしまい一気に老いが進みます。さらに、年老いて歯の残りが少ない人は、20本以上残っている人に比べると約2倍も死亡リスクが高まってしまうことが明らかになっています。
一生、自分の歯で食べるということは非常に大切なことなんです。
ですが前述しているように、少しの違和感で歯科に行ってすぐに虫歯を削ってしまうことは、治療しているつもりが逆に虫歯を悪化させる結果に繋がります。
再発と治療を繰り返す負のスパイラル
では、削る治療を行うと歯はどうなってしまうのでしょうか――?
虫歯になった部分を高速タービンなどの歯科治療機で削ってしまうと、歯の表面を覆っているエナメル質の部分に《マイクロクラック》という小さなヒビが無数に入ってしまいます。
このエナメル質に入ったヒビから、エナメル質の下にある象牙質との間に菌が入り込んでしまい、そこに溜まってしまうんです。このことが原因となって、歯は外側からではなく内側から虫歯になってしまいます。
こうなると、その虫歯をさらに削り詰め物を入れるのですが、入り込んだ菌は歯の内部に残ってしまうので、詰め物の下で虫歯菌が繁殖することになります。
この流れが《虫歯の負のスパイラル》です。
治療途中で行う《うがい》にも虫歯菌を繁殖させる原因が
虫歯になって歯科に行き、虫歯を削る治療を行うと、必ず治療途中で うがい をしますが、これが非常に危険信号なんです。
もちろん、歯科ユニットから水が出て来るチューブというのは消毒されるように出来ているのですが、比較的に綺麗と言われているフッ素コートのチューブでも約10万以上の細菌が存在しています。
当然のことなのですが、滅菌室でもない限り、どれだけ綺麗に消毒しても菌を完全に消すことは不可能です。ということは、削った患部にそのまま菌だらけの水でうがいをすることになります。
例えて言うなら『怪我をして傷口を塞がないままでドブ川を泳いでいる』ような状態と言っても過言ではありません。虫歯を削る治療というのは、こういったリスクを伴っているんです。
熱膨張によって詰めた銀の体積は変わってしまう
虫歯を治療するために削った跡は、銀などを詰めたうえで、その隙間をセメントで埋める形になります。
ですが、熱いスープやコーヒー、冷たい水やビールなどを飲んだりすると、熱膨張の作用によって歯に詰めた銀の体積が変わります。そこからセメントが流れたり崩れたりすることで、その隙間から虫歯菌が入り込んで、再発してしまうことになるんです。
つまり、歯を削るということは、治療後に虫歯を再発させてしまうリスクを抱え続けるということになります。
さらに、前述している『歯を削ったことで出来たマイクロクラック』によって、歯が割れたり折れたりするリスクも高まってしまいます。
神経を抜くと歯の状況は悪化の一途を辿る
歯を削ることによって虫歯が悪化したり、歯が折れたり割れたりするリスクが高まることをお話してきました。
こういった状況になった場合、歯科医が選択肢の一つとして提示してくるのが《神経を抜く》という処置です。しかし歯の神経を抜いてしまうと、治癒どころか歯の状況は悪化する一方となってしまうんです。
では『歯の神経を抜いてしまうと一体どういったことになるのか』について話していこうと思います。
神経が無くなると歯の自然治癒力が失われる
歯の中には《歯髄(しずい)》という、神経や血管、細胞が詰まった組織があるのですが、神経を抜くという治療法は、歯にとって大切なこの部分を、器具を使って掻き出し取り除いてしまうということになります。
歯髄はミネラルなどの栄養素を運ぶことによって、歯の健康状態を守っています。
つまり、虫歯が出来ても歯髄の細胞が残っていると、歯の組織を変化させたり修復する働きがあるので、歯が本来持っている自然治癒力を発揮することができます。
しかし、歯の神経(=歯髄)を取り除いてしまうと、当然のことながら治癒力が完全に失われてしまい、歯は死んだ状態になってしまい、虫歯は進行の一途を辿るということです。
神経を取り除くことは抜歯へのカウントダウン
さらに、神経(=歯髄)を取り除いてしまうことで、歯に必要な水分の供給までもがストップしてしまいます。
歯というのは、水分が供給されることで、割れにくく折れにくい弾力性を保つことが出来るのです。しかし神経を抜くという処置をしてしまうと、その弾力性も失われてしまいます。
つまり、歯の神経を抜くということは、歯に必要な栄養が行き渡らなくなるわけなので、すでに抜歯までは秒読みの段階に入っているということなんです。
抜歯はほかの歯にも悪影響が及んでしまう
抜歯をすると、歯を支えている《歯槽骨(しそうこつ)》という骨が「ここにはもう歯は無い」と認識してしまいます。
こうなると、抜いた歯の周囲の歯もグラグラと崩れ始めます。「歯の1本くらい無くなっても大丈夫だよ」と思ってしまいがちですが、この考え方は非常に危険です。
歯を1本抜いてしまうことで、次々と他の歯を失っていくことにもなりかねないのです。
歯の治療は初っ端が最も重要
前述していますが、虫歯治療の最初の段階で、歯を削る歯科医が多いことは確かです。
しかし、初っ端の段階で歯を削ってしまったことによって虫歯が悪化し、これによって神経を抜かざるを得なくなり、最終的には抜歯をしなければならない状態へと進行します。つまり、治療で最も重要な《最初の第一歩》を間違ったことにより。口の中がボロボロになってしまうことになります。
では『すでに歯を削っている人は諦めないといけないのか』というと、そうではありません。
現在の歯の状況に合わせたベストな治療を選択していくことで、これ以上、歯を失うことなく口の中を改善していく治療を行えば、残っている歯を守ることが出来るんです。
最新の歯の治療法で虫歯を撃退
最新の歯の治療法と言っても、多くの方はピンと来ないかもしれません。
そこでここからは、歯を削らずに虫歯を治療することができる新しい治療法を紹介していきたいと思います。
歯の最新治療法①:ドックベスト療法
ドックベスト療法は、歯が本来持っている自然治癒力を最大限に活かします。
ドックベスト療法のイメージ
『つくば学園の森 歯科クリニック』より画像を引用
どういった治療法かというと、ドックベストセメント(銅2%・鉄1%・複数のミネラルを含む)という薬を患部に詰めて虫歯菌を死滅させ、歯の自然治癒力を促すことで、その働きに任せてしまう方法です。
ドックベスト療法であれば、歯を削る恐怖心や痛みなどとも無縁で、将来的に多くの歯を残すことができる効果的な治療法だと言えるでしょう。
歯の最新治療法②:ヒールオゾン療法
その名の通り、オゾンを利用して虫歯を治療する方法です。
ヒールオゾン療法のイメージ『髙木歯科医院』より画像を引用
オゾンは、殺菌力が塩素の7倍とも言われており、そのオゾンの殺菌力で虫歯菌を殺菌する治療法です。ヒールオゾン療法を行えば、初期の虫歯であれば全く歯を削ることなく治療することが出来ます。
全くの無痛治療なので、歯を削るよりも効果的で、気構える必要も無い安心できる治療だと言えます。
歯の最新治療法③:レーザー治療
虫歯の菌をレーザーを使って焼くことで歯を治療する方法です。
レーザー治療のイメージ
『飛鳥歯科クリニック』より画像を引用
レーザー治療は、虫歯の治療のみではなく、歯周病の治療にも用いられている方法で、歯と歯肉の間(歯周ポケット)の隙間に潜んでいる歯周病菌を焼き殺します。
歯を削る高速タービンのような「キーン」という嫌な音がしないので、治療に対する恐怖心を抑えることができます。
歯周病は体質を改善することで自然治癒できる
虫歯と並んで、人が歯を失う原因となるのが歯周病です。
歯周病の症状(重度になると歯槽膿漏)『松山中平歯科クリニック』より画像を引用
歯周病というのは、歯垢(しこう)に付いた歯周病菌が、歯を取り囲んでいる歯肉や歯槽骨に繁殖して破壊してしまう病気のことを言います。これが悪化してしまうと、歯茎が熟れたトマトのようになってしまいます。いわゆる歯槽膿漏というやつです。
歯槽膿漏がひどくなってしまうと、抜歯しか選択肢がなくなってしまいます。
しかし、歯周病は体質を改善させることによって、外科的な治療を行う前に自然治癒させることが可能なんです。
歯周病の自然治癒法:シュガーコントロール
これはいたって簡単な方法で、炭水化物を控えるだけです。
歯周病というのは、高血糖状態によって歯肉の血管が傷つけられて発症するという側面があります。なので、炭水化物を控えることで、歯に付く歯垢を減らすことが出来ます。
歯槽膿漏になる前に、歯の自然治癒力を最大限に活かすことで、外科的治療を行わずに歯周病を改善することが可能となるんです。
歯を削ると認知機能に大きく影響を及ぼす
ここまで話してきたように、歯を削ると虫歯が悪化して、神経を抜いたり抜歯をしなければならない可能性が高くなります。
しかし、糖尿病や心血管疾患などの様々な病気を引き起こす可能性があり、歯だけでは済まない事態にも繋がります。なかでも、歯と深い関係があることで知られているのが認知症なんです。
噛めないと記憶する力がどんどん衰える
噛むという動作は、脳の血流を良くし、記憶に関係する脳の部位である《海馬(かいば)》を活性化する働きがあります(タツノオトシゴのような形をした部位)。
タツノオトシゴ(左)と人間の海馬(右)
しかし、歯を削って最終的に抜くことになってしまえば、日々の食事を噛みしめることが出来なくなり、脳への刺激が小さくなってしまうので、認知機能はどんどん低下していきます。
このことから分かるように、噛み合わせが悪くなったり、噛む力が弱くなったりすると、認知機能が低下してしまう可能性が大きくなります。つまり、認知症というのは、歯を健康に保つことが効果的な予防法なんです。
『噛む動作』と『脳の活性化』の関係とは
歯が抜けて、上の歯と下の歯の接している面積が小さければ小さいほど、脳の中の記憶や計算を司る部位の働きが弱くなります。
なぜそうなるのか――?
食事をして噛む動作をすると、歯と歯を支えている歯槽骨の間にある《歯根膜(しこんまく)》という膜を通じて、口の中に入った食べ物の味や、温かさ、冷たさなどが、視床下部(脳の中で生命維持に必要な機能を持つ部位)や、大脳辺縁系(情動や本能などを司る部位)に伝わって刺激します。
つまり、口の中に入れた食べ物を、しっかりと噛んで味わうことが、脳に刺激を与え活性化させているということなんです。
虫歯を削りたがる歯科医が多い現実
現在では、歯を削らなくても虫歯や歯周病を治療する方法があるのですが、こういった治療を紹介せずに患者の歯を削る歯科医は少なくありません。
これには理由があるんです。
現在の医療保険制度では、虫歯を削ると歯科医の収入になるのですが、何もしなければ収入にならないんです。そのために、治療の必要がない歯でも削る治療を行う歯科医がいるのが現実です。
今現在、虫歯や歯周病の治療を行っている人、もしくはこれから治療に行こうと思っている人は、前述しているような治療法があることを念頭に置いて、歯科医にしっかりと聞くことが非常に重要なことだと言えるでしょう。
まとめ(虫歯の最新治療法)
《虫歯の治療=虫歯になった歯を削る》という治療法を当たり前のように信じ込んでいる人は多数を占めています。
しかし、歯を削ったことによる将来的なリスクを考えると、患者側もしっかりとした情報を収集して、10年後、20年後、30年後に出来るだけ多くの歯を残すことが非常に重要なことだと言えるでしょう。
医療技術は日々、驚くべきスピードで進歩しています。
当記事で紹介しているように、歯を削らない治療法は現実に存在しているので、最後まで自分の歯で食事をするために、最新の治療法を選択する意思を持って頂きたいと思います。
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