病気と遺伝のタブー――。
人間ドックを受けたことのある方であればご存知でしょうが、問診で書かされる《親の既往歴》。これを書く本当の理由は、人間ドックの受診者が『将来どんな病気にかかってしまうリスクがあるのか』を見極めるためです。
つまり、最新の医学では、すでに遺伝情報を活用し始めているのです。
ですが、遺伝と病気の関係について、真実を知ることから目を背けている方は少なくないと思います。
- 大腸ガン・前立腺ガンは遺伝しやすい
- 肺ガン・肝ガンは遺伝しにくい
- 脳卒中を発症しやすい遺伝子がある
これらの他にも、糖尿病・緑内障、さらには虫歯に至るまで、最新の医学で遺伝による将来のリスクが分かるようになりました。
未来の自分のリスクを知ることができると、前もってその病気への対策を打っておくことができます。しかし、知りたい気持ちはあるけど、知ってしまうことが恐ろしいと思う方は多いはずです。
そこでこの記事では、あえて、遺伝と病気の本当の関係について真っ向から踏み込んでいきます。
それによって、ご自身はもちろん、大切なご家族の将来に対して、真っ向から向き合うきっかけ作りになるための情報を伝えていこうと思っています。
決して損になる内容ではないので、ぜひ最後までお読み下さい。
ページコンテンツ
健康に対する常識が変わる遺伝子情報
日々、進歩と遂げている現代医学とともに、遺伝子の分野での研究に関しても脅威の進歩を遂げています。
たとえば、わずかな血液や唾液のサンプルさえあれば、その人間の全遺伝情報が解析できるようにまでなっています。遺伝子分野の研究が進むとともに、浮かび上がってきたのが『病気は遺伝が原因なのか、環境が引き起こすのか』といった課題です。
そこでまずは、遺伝と病気の関係について、どういった研究がなされているのかを話していきたいと思います。
一卵性双生児と二卵性双生児の比較
《遺伝要因と病気の関係》を考察する際に、最も有効とされているのが双子の研究です。
双子には2種類あり、遺伝子がほぼ100%一致する一卵性双生児と、平均して50%の一致に止まる二卵性双生児に分かれます。
同じ環境で育った一卵性双生児と二卵性双生児が病気を発症した際に、どのように容態が違ってくるのかを調べることで、その病気について《遺伝の影響によるものなのか》《環境の影響によるものなのか》を推測することが出来るんです。
重大疾病の遺による影響が50%を超える
2013年に、アメリカ人のデイビッド・B・エイガス医師が、26の病気の発症について、双子研究の結果を発表しました。
その内容によると、以下の3つの重大疾病について、遺伝による影響が50%を大きく上回っていたのです。
遺伝的影響による発症率
病名 | 遺伝による影響 |
心筋梗塞(男性) | 57% |
アルツハイマー病 | 62% |
2型糖尿病 | 64% |
これ以外にも、大腸ガンや脳卒中、さらには虫歯に至るまで、遺伝による影響が50%を超えています。そして病気以外にも、身長や体重といったところで、遺伝的要因が大きく影響しています。
身長・体重・肥満の遺伝的影響
この驚くべき研究結果によって、多くの病気が遺伝的要因によることが分かり、世界中でその真偽をめぐる論争となったのです。
ハリウッド女優が投じた一石
前述の双子の研究結果から分かるように、遺伝子を調べることで《その人がどんな体質なのか》《どんな病気を発症する可能性が高いのか》といった将来のリスクなどを、病気になる前から予測することが出来るんです。
世界中に驚きをもたらした、ハリウッド女優であるアンジェリーナ・ジョリー(42)が、両乳房を全摘出した一件を覚えている方も多いはずです。
彼女は、2013年に母親を乳ガンで亡くし、その後、遺伝子検査を受けた結果『将来、乳ガンを発症する確率が87%』と診断されて、まだ全く異常のない両乳房を摘出する手術を受けました。つまり《遺伝性のガンを予防する》という意味で手術を受けているんです。
彼女の手術のニュースにより『治療は病気になってから受けるもの』という、それまでの医療の常識を根幹から揺るがすものとなりました。
これにより、遺伝情報を医療に活用することに、世界中で賛否両論を巻き起こすことになったのです。
遺伝情報の活用は差別問題に発展する可能性も
前述のアンジェリーナ・ジョリーのように、遺伝子情報を活用すると、将来発症する可能性がある疾病に対して、前もって対策を取ることが可能となります。
しかし、遺伝情報を医療の分野に活用することは、極めて難しい倫理問題を孕んでいるんです。
つまり、とある人が遺伝子検査を受け、病気になる可能性を示す遺伝子の存在が明らかになった場合、就職や昇進、結婚や出産といった、その人の人生を左右する出来事で差別を受ける可能性が非常に高くなります。
企業としては、表向きは「差別はしません」と謳っていても、将来病気を発症する可能性が高い人を雇ったり、昇進させたりしないでしょう。結婚なども同じような理由から、病気になる可能性がある人を避けてしまうのは正直な部分だと思います。
ゲノムライフログという危険な技術
遺伝子技術というのは、私たちが想像している異常に進歩しています。
たとえばゲノムライフログという技術があるのですが、これは、母親の胎内にうる段階で『将来どんな病気を発症しやすいか』といったところまで把握できる技術であり、近い将来には間違いなく実現するテクノロジーです。
ゲノム医療の将来像
『国立がん研究センター』より画像を引用
一見、素晴らしい技術のように思えてしまいますが、このような技術が確立することで、優良思想に繋がりかねない危険な要素を孕んでいます。
現在の日本では、まだこういった遺伝のタブーに関する議論は進んでいいませんが、アメリカではすでに《遺伝子の分析結果に基づく差別を禁止する》という法案が成立しているんです。
タブーに踏み込むことで開ける未来もある
遺伝子技術が差別に繋がる危険性を孕んでいることは事実なのですが、これをいつまでもタブーにしているのも問題があります。
たとえば、将来ガンになる可能性が高いことを知っていれば、有効な対策や治療法を取ることができます。発症してからでは手遅れになってしまう病でも、事前に知ることで、病気そのものを発症しなくすることも可能なのが遺伝子技術なんです。
いまや、最適な診察や治療を受けるためには、まず、遺伝子を調べることが前提になりつつあります。
未来の自分が発症する病気を知ってしまう恐怖より、メリットの方が上回るようになれば、医療のあり方は大きく変わります。まさに『病気と遺伝のタブーに踏み込む』時代が目の前に来ているのかもしれません。
死につながる病と遺伝的要因との関係
死につながる病として最も代表的なものが、日本人の死因トップでもあるガンです。
ガンと遺伝との関係は、ほぼ100%の方が気になっているところだと思います。日本人はよく「うちはガン家系だから」ということを言います。ですが、実際にはどれだけ遺伝の影響があるのか知りたい方も少なくないでしょう。
そこでまずは、ガンと遺伝的影響について話してみたいと思います。
ガンの遺伝的要因は……わずか5%?
ガンになってしまう主な要因としては2つあります。
- 老化によりDNAに傷がつく加齢要因
- 親から原因遺伝子の変異を受け継ぐ遺伝要因
上記の2つが、ガン発症の主な要因となるのですが、2つ目の『遺伝子変異を親から受け継いでいる』場合には、生活習慣や年齢などに関わらずガンを発症してしまうことがあります。
ただ、全てのガン患者のうち、このような遺伝要因でガンになってしまうのは、約5%ほどだと言われています。
「なんだ、たったの5%なら心配しなくても良いじゃん」と思った方、侮ってはいけません。5%という数字は、あくまでも『ガン全体で』という意味であって、問題なのは《遺伝しやすいガン》と《遺伝しにくいガン》があるという点なんです。
《遺伝リスクが高いガン》と《遺伝リスクが低いガン》
遺伝しやすいガンの代表は大腸ガンです。その中でも全大腸ガンの約5%を占めている《遺伝性大腸ガン》というものです。
《MSH2》や《MLH1》といった遺伝子の変異を親から受け継いでいる方は、どれだけ毎日の生活習慣に気を使っていても、80歳までに約82%の人が大腸ガンを患ってしまうという米国のデータがあるんです。
さらに、大腸ガン以外にも遺伝しやすいガンは存在します。
- 乳ガン
- 前立腺ガン
- 腎臓ガン
- 膵臓ガン
これらも大腸ガンと同様に、遺伝性が強いガンだと言われています。
とくに前立腺ガンは、父親が患っている場合、その子供の発症リスクは、他の人の1.65倍~3.77倍になり、兄弟の場合は2.57倍~3倍にものぼります。
腎臓ガンは、高血圧や塩分の取り込み異常などに関連する遺伝子がある場合、発症率が1.49倍となります。膵臓ガンは、遺伝子のタイプによって変わってくるのですが、遺伝による発症リスクは47%~65%にものぼります。
反対に、遺伝しにくいガンの代表としては、肺ガン・胃ガン・肝ガンが挙げられます。
肺ガンの場合は喫煙、胃ガンの場合はピロリ菌感染、肝ガンの場合はアルコールやウィルス感染といった、環境的要因の影響が大きいと言われています。
ガン家系かどうかを見極めるポイントとは
自分が『ガンの遺伝的要因を持っているのか』というのは、誰もが気になるところだと思います。
『国立がん研究センター』より画像を引用
遺伝的要因を見極めるための《重要な3つのポイント》を以下に挙げておきますので、ぜひ参考にして下さい。
ガン家系かどうかを見極める3つのポイント
- 父方母方どちらかの血縁者に集中して同じ種類のガンが多発している
- 若年でガンを発症した人がいる
- 男性の乳ガンなどの珍しいガンを発症した人がいる
上記の3つのポイントのうち、いずれかに当てはまる場合は、ガン家系と疑われるので、定期的な検診をしっかり受けるように心がけるなどの対策が必要だと言えます。
くも膜下出血に至ってはリスクが10倍に
日本人の死因で上位の占めている疾病に脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)や心筋梗塞があるのですが、これらは大腸ガンのように、病気そのものを招く遺伝子を受け継ぐものではありません。
どういう事かというと、脳卒中や心筋梗塞の原因となる《高血圧・糖尿病・動脈硬化》などの脳卒中になりやすい体質を受け継いでしまうんです。
そして、脳卒中のなかでも、くも膜下出血に関して言えば、遺伝的要因での発症リスクが約9倍~10倍も高くなります。
つまり、くも膜下出血は、病気そのものが遺伝するということではなく、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤(血管のこぶ)や脳動脈奇形が遺伝しやすくなるので、遺伝的要因での発症リスクが高まってしまうのです。
親が脳動脈瘤を持っている場合、子供に遺伝する割合は約10%~30%です。
ただ、脳動脈瘤が破裂する確率というのは0.1%~0.2%と非常に低いので、くも膜下出血を必要以上に恐れる必要はないのですが、脳動脈瘤が遺伝していない人と比べた場合、食生活などの生活習慣をしっかりする必要があると言えます。
ガン以外にも遺伝的要因が高い病気
日常生活に様々な支障をきたす病気と遺伝との関係に関しても、やはり気になる方は少なくないと思います。
たとえば、失明原因のトップである緑内障は、遺伝的要因が意外にも高いことが知られています。
緑内障というのは、眼圧が高くなることで神経が圧迫され、視野が欠けてしまう病気です。非常に恐ろしい病気なのですが、緑内障に遺伝的要因が影響する割合というのは、実に87%にも達しているんです。
緑内障は遺伝子検査よりも眼科を受診すべき
遺伝的要因が高いのであれば、遺伝子検査を受診して、発症してしまう前に対策を講じようと思う方もいるかと思います。
ただ、現在ではOCT(眼底3次元画像解析)という検査機器で目の診断をすれば、緑内障の自覚症状が出る前に察知することができます。もし、3親等以内の身内に緑内障を発症した方がいる場合には、OCTのある眼科で、しっかり検査してもらうことをお勧めします。
大病だけではなく身近な病気も遺伝する
遺伝する病気は、ガンなどの死に至る病だけではありません。
たとえば、腰痛や花粉症、不眠症や虫歯に至るまで、多くの方が抱えている身近な病気でさえも、環境的要因よりも遺伝的要因が大きいものがあります。以下に、その代表的な病気をまとめておきますので、ご自身やご家族の健康管理の参考にして頂ければと思います。
遺伝的要因の割合が大きい身近な病気
病名 | 解説 |
偏頭痛 | 父親か母親のどちらかが偏頭痛持ちであれば、50%~70%の割合で遺伝します。 両親とも偏頭痛を持っている場合、70%異常の割合で遺伝します。 |
不眠症 | 《セロトニントランスポーター》などの精神不安定に関与している遺伝子の存在が明らかになっています。 |
花粉症 | 父親か母親のどちらかが花粉症の場合、30%~40%の割合で遺伝します。 両親とも花粉症を患っている場合、50%の割合で遺伝します。 |
虫歯 | 両親ともに虫歯がある場合、45%~67%の割合で遺伝します。 骨格、歯の質、唾液の質や量などが遺伝すると考えられています。 |
腰痛 | コラーゲンの生成に関する遺伝子に異変がある人の場合、異変が無い人と比べると1.4倍ほど椎間板ヘルニアを発症しやすくなります。 |
喘息 | 遺伝の影響を最も受けやすい病気の一つで、遺伝的要因による割合は48.6%にものぼります。 喘息の発作の原因となるアレルゲンは、アトピー性皮膚炎や花粉症などを引き起こす可能性があります。 |
男性型 脱毛症 |
20歳代~30歳代から薄毛が目立つ《若ハゲ》は、遺伝低要因が強く影響します。 ただし、60歳代を超えている人の場合、毛根が弱くなり髪の毛の再生能力が衰えてしまうため、薄毛になるのは自然だと言えます。 |
病気の遺伝には表現促進現象という特徴がある
大病の遺伝的要因や身近な病気の遺伝に至るまで、続々とリスク遺伝子が明らかになっていくと、親の既往歴を気にする方が多くなるはずです。
既往歴を知れば、予防治療を活かすことができます。
ただ気をつけて頂きたいのは、遺伝的要因には《表現促進現象》という特徴があるんです。これは、遺伝性の疾患というのは、次世代になると若年の段階で発症しやすくなる現象のことを言います。
タイムラグを頭に入れておく必要がある
たとえば、親が70歳代で認知症を患った場合、遺伝的要素を受け継いだ子供というのは、早くて50歳代といった感じで、親が発症した年齢よりも若い段階で認知症を患う可能性が高くなります。
この現象が《表現促進現象》というものです。
親の既往歴を参考にする場合には、こういったタイムラグを念頭に置いておくことが重要です。
遺伝子を調べれば最適な治療が受けられる
最先端の医療では、自分の病気を理解して、最も適切な治療を受けるためには、まず遺伝子を調べることが前提になりつつあります。
つまり、自分の遺伝子変異を正確に把握することができれば、ピンポイントでその病気に有効な治療法を受けることが出来るんです。一人一人の事情を考慮した、いわゆる『オーダーメイドの医療』が進むことで、これまでに無い医療効果が期待できます。
ただし、遺伝子というのは究極の個人情報でもあるので、遺伝子の取り扱いに関しては、倫理的な問題が大きくのしかかってきます。
こういった問題をクリアすることができれば、これからの医療が大きく飛躍することになると言えます。
遺伝子検査キット ジーンライフ《Genesis2.0》
現在では、一般人でも手軽に遺伝子検査を受けることができます。
たとえば、ジェネシスヘルスケア株式会社が提供している検査キット『ジーンライフ ジェネシス2.0(¥29,800-)』は、自分の唾液を郵送するだけで、遺伝子を調べることができます。
遺伝子検査のジーンライフ<Genesis2.0>の申し込みはこちらから
遺伝子の統計データと比較して、受診者がどれだけ病気のリスクを持っているのかを、ジェネシス2.0なら合計360項目にわたってチェックすることが出来ます。
遺伝子検査と聞くと、大きな研究所のようなところに行って受けるようなイメージもありますが、こういった検査キットを利用することで、手軽に誰でも行えるようになっています。
まとめ(『遺伝と病気』の真実を公開)
もはや時代は、遺伝と病気の関係をタブーにせず、真実を知るべき方向へと進んでいます。
病気と遺伝的要因の関係性を知ることによって、これまで『死を待つ』ことしかなかった病も、個人個人に合わせたピンポイントの治療へと発展していくでしょう。死を避け人生を謳歌できる時代はもうすぐそこまで迫っています。
将来のリスクを最小限に抑えるためにも、まずは、自分の遺伝要素を知ることから始めてみてはいかがでしょうか?
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